Commercial City ―商業都市― [3]
Last Update:2004.12.27
「・・・なるほど」
店に帰ってきたカインから事の次第を聞いたグラムは少しの間沈黙していた。
グラムの脳が音を立てんばかりに動いていることは、カインにも直ぐ察しがついた。
「お前さんの過去と関係があるって事は、だ。誰かが故意にその情報を隠していたって事も考えられるな。
そうすれば事件の後に俺の手元に全くその手の資料が集まらなかったのも納得できる。
それに、ラグナロクに関係があるって事は昔の出来事が関係してるんだろうが・・・
これは何とも言えねぇな、調査を進めていかねぇと推論の域を出ねぇ。
魔法大戦にしろお前の過去にしろ、俺の手元にある資料だけじゃ何とも察しがたい。
敵方の言葉だけににわかに信じがたいしな。その情報の真偽も全くわかんねぇわけだし。」
そこまで行って、カインに同意を求める。
カインも同じ意見のようで、頷いた。
「グラム、調べられるか?」
カインが、訪ねる。
「俺を誰だと思ってる?」
「・・・そうだな、愚問だった。」
グラムの力強い言葉に、カインは少しばかり安心したようだった。
「だが、流石にこれら全部をいっぺんに調べるのはきつい。
とりあえずはお前さんの『あの事件』から一つずつ潰していきたいんだが、いいか?」
「あぁ、構わない。」
グラムの提案に、カインはゆっくりと頷いた。
「さて、じゃあこの際だからついでに報告しちまうか。
あっちのギルドの大まかな動きを大体調査し終えたんで、その調査結果だ。」
そういって、グラムはカインに資料を投げ渡す。
「それを見ながらでいいから聞いてくれ。
ソルジャーズ・ギルドの今後の動きだが、東に相当な数のハンターを送り込んでやがるな。」
「東?」
「あぁ、何でも『伝説の7武器』のひとつ、エクシキューターを狙ってるらしい。
それが東の大陸に眠っていると言う情報をどこかから手に入れたらしいんだが、その情報ソースまでは分からなかった。
それと、お前さんに対する特別討伐チームも結成の動きを見せてる。
この辺りの動きを見てると、あいつらはどうも伝説の7武器を集めてるらしい。
裏に何かの組織の存在が見え隠れしてるんだが・・・ こっちもまだよく分かってない。
武器を狙う理由についてもまだ調査中だが、何か大がかりなことをしようとしてるらしいな。」
そこまで言って、カインを見る。
「特別討伐チームは跳ね返してやるから良いんだが・・・
今俺がラグナロクを持ってるし、エレクって奴が持ってるのは確証がないがグーングニルだろう。
それ以外の武器、例えばエクスカリバーとかはどうなってんだ?」
「そいつらは、既に他に宿主がいる。
それもそのうち3つは既に懐柔済だ。」
グラムが渋い顔をする。そうなると、後はカインが阻止するしかないと言うことである。
「ちなみに、ただ一つ残った魔銃イレイザーについてはまだ行方を追っているらしい。
一切の情報が入ってこなくて当局も相当焦ってるらしいな。」
そこまで聞いて、カインはにやり、と笑った。
「じゃあ、当面は大丈夫だな。
気になるのはこいつの秘密とギルドの裏で手を引いてる奴らの存在だが・・・」
「それはお前さんの過去と平行して調べておくよ。」
「わかった、苦労かけるな。」
「気にすんなよ。俺とお前の仲だろ?」
「・・・ああ。」
グラムもあらかたの口頭説明が終わったらしく、その後はこれと言って何も喋らなかった。
カインも改めて資料全てに目を通す。さすがグラム、とカインが賞賛するほどそこには量・質共に十分高い資料が存在した。
中でも機密レベルである7武器捜索の事までもきっちりと調べ上げてあり、流石のカインも驚いたという。
資料に目を通したところでグラムにそれを投げ渡す。グラムはそれを受け取ると、即座に燃やしてしまった。
これはいざというときのための証拠の隠滅である。
「さて、カイン。お前はどうするつもりだ?」
資料が完全に炭になったのを確認すると、グラムが改めて切り出す。
「まだ行ったこともないし、東に行こうと思ってるが。」
「向こうは殆どギルドの縄張りみたいなもんだが、大丈夫か?」
「何とかなるさ。それに今回は余り長居するつもりはない。
調査のこともあるし、せいぜいで1ヶ月程度で中央に戻ってくるよ。」
「そうか、気をつけろよ。」
グラムはグラムなりに東へ行くことへの危険を感じているようだった。
だから、カインは笑って答えた。
「あぁ。必ずここに帰ってくるよ。」
翌朝。
まだ多くの店が慌ただしく仕入れを行っている時間に、カインは出発の準備を整えていた。
グラムもまた仕入れのために早起きしていたため、カインを見送ることが出来た。
「じゃ、行ってくる。」
「あぁ、気をつけろよ。」
「大丈夫よ、グラム。カインはしぶとく生きる人間だから。」
「おいこら待てルーン、それは言い過ぎだろ。」
「でも事実なんだから良いんじゃないの?」
「こいつのお陰で限りなく死ににくい身体になってんじゃないか。」
「うわ、失礼ね。」
二人のやりとりを、グラムは笑いながら見ていた。
「おまえら本当に仲良いよなぁ。」
「そうか?」
「あぁ、はたから見てて微笑ましいほどにな。」
「まぁたグラムったら、お膳立てがうまいんだから。」
「はっはっは、んじゃ行ってこい。」
「あぁ、じゃあな。」
そう言うと、二人の姿は町中へと消えた。
(全く、いつまでも変わんないよな、あいつらも・・・)
カインとルーンのやりとりを見てると、切に感じられるこの思い。
「生きて、帰ってこいよ。」
小さく呟くと、グラムは店の中へと消えていった。
あとがき
第1章はこれで完結です。
比較的短めになったんですが、これは帳尻会わせと言うことでご勘弁下さい・゜・(ノД`)・゜・
こんな感じで、1章は大体2〜3話で構成していくつもりです。
1話自体を短く構成すればもう少し取れるんですが、短いと直ぐに読み終わっちゃって杓かなと。
私自身もあまり短いのをぽんぽんと出すのは好きではないのでこの方針を取ります。
・・・ただ、短く取ったほうが更新頻度は上がると思うんだけどね、そこはまぁお察し下さい(マテ
今回会話説明も多いですが、それもやっぱりお察し下さいorz
キャラの個性を出すのに会話は大切ですから!・・・たぶん(弱)