SS『雪の日の物語』 |
中3時に執筆した短編小説「雪の日の物語」。 折角の雪遊びが出来る日なのに、風邪で学校に行けない。そんな女の子が主人公。 |
Update:2004.4.5 |
窓から外を眺めれば雪が積もっている。 見える家の屋根の上には結構な厚みの雪。 昨日降った雪の功績だろうか、それとも夜にここまで降り積もったのだろうか。 それは、雪合戦や大きな雪だるまを作ってもなくならない、と思う。 こんな日の小学校と言えば 「先生を巻き込んでまでクラス単位で雪合戦をしてどろどろになる人」とか 「雪合戦は嫌だから端っこの方で雪だるまを作っている人」とか 「濡れるのが嫌だから教室でストーブに当たりながら談話をして過ごす人」の 大体3パターンであろう。 もっとも、こんな日に学校を休んで喜んだり後悔する人も中にはいるであろうが・・・ 「はぁ〜・・・ 何で風邪なんか引いちゃったのかな、あたし。」 住宅街の一角にあるごく普通の一軒家。 窓の外から見える風景を眺めながら、少女=千夏はため息をついた。 雪の日と言えば雪合戦。 行動派で運動神経があり男子と一緒に混じって遊ぶ彼女にとっては こんな雪の日はクラスの仲間に自分の運動神経を見せつける絶好のチャンスなのである。 が、事もあろうに前日の雪の中はしゃぎすぎたせいか風邪を引いてしまい、 学校を休むはめになってしまったのである。 「今頃、みんなで雪合戦をしてわいわい楽しんでるんだろうなぁ・・・」 ちらりと時計を見てまた外に視線を戻す。そして、千夏はまた、ため息をついた。 だが、数時間も続けて同じ風景を見ていると流石に飽きてくる。 千夏がちょうど近くにあった漫画を手にして読み始めたとき、絶妙のタイミングで兄が帰ってきた。 「ただいま〜・・・ っても家にいるのは千夏くらいか。」 帰り道に雪玉の投げ合いでもやっていたのだろう。兄=翔太はびしょぬれで帰ってきた。 (お兄ちゃんが帰ってきた? 早く学校の様子を聞きたいな〜) 千夏は沸き上がる衝動を抑えながら、漫画を手にして翔太が部屋に戻るを待つことにした。 「おかえり〜!」 「のわぁっ! び、びっくりするだろ。」 部屋に戻ってきた翔太は、千夏の普段休んだときは聞いたことのない大きな「おかえり」にびっくりし、少しよろめいた。 だが、直ぐに部屋の中に入り、着替えを始めた。 「お兄ちゃん、外、どんな感じだった?」 「別に・・・ 雪が多くて歩きにくいけど遊ぶのには良いだろうな。」 「ふうん・・・ 雪合戦はしたの?」 「当然したさ。でないとこんなに濡れないだろ?」 「そんなに濡れたって事は相当当てられたんだね〜」 「う、うるさい!」 等と言った会話が展開される。 (そろそろ、聞こうかなぁ・・・) 翔太は大概着替えなどを済ませたら下に降りてしまう。その前に、本題に入らなければいけないのだ。 馬鹿げているかも知れないけど、今一番聞きたいこと。 千夏は、勇気を振り絞り、言った。 「ねぇ・・・ 休み時間の学校風景、話してくれない?」 「はぁ? 千夏、何変なこと・・・」 明日の授業の用意をしていた翔太は千夏を振り向く。 そこには、期待に目を膨らませている千夏の姿があった。 (うっ・・・ これは、断ったら後が怖い・・・) 早々に下におりたかった翔太は千夏の視線に観念し、千夏の隣に座ってやった。 「仕方ねぇなぁ・・・ 話してやるよ。」 「やたーっ!」 そして、翔太は千夏が納得するまで延々と学校風景を話すことになったのであった。 そして話し続けること30分。 「・・・で、納得したか?これで」 「うん!」 兄の親切心に感動したのかはたまた話に満足したのか、千夏の顔には笑顔が溢れていた。 「なら、下に行っても良いんだな?」 「いいよ。」 やっとか。 開放感からか一気に階段を駆け下りようとした翔太だったが、 あることに気づき、鞄に手をやる。 そして、中からプリントを探し出し、千夏に差し出す。 「ほらよ、明日の連絡。 早く治してねってクラスメイトが言ってたぞ。 ・・・もっとも、その様子じゃ明日は出られそうだけどな。」 「そうだといいんだけどねぇ。冬の風邪は長引くって言うみたいだし。」 「あはは、そうかもな。」 そう言うと、翔太はダダダッと階段を駆け下りていった。 兄が開けっ放しにしていったドアを閉めようと立ち上がる千夏。 その瞳には、涙が溢れていた。 「ありがとう・・・ お兄ちゃん。」 千夏は、誰にも聞こえないような小さな声でぼそっと呟いた。
SS。ちょうど1年ほど前に書いたモノです。 国語の授業の一環として他の人とはまた別のモノを書こうと思いSSに至った訳なんですが。 その授業は詩の情景を描いて、その説明を端書きに加えるというものでした。 しかし怠慢管理人は面倒なので簡単な絵とこれを打ち出したプリントを直接先生に渡して終了。 張り出されたりしなかったのはこれが原因だと今思い返しているわけです(死 参考程度に。元の詩は石川啄木氏のものです、興味があれば探してみて下さい。 その後、細かな加筆修正を加えて現バージョンが出来上がりました。 ジョエル氏のお墨付き、自分でも傑作と豪語できますが展開の速さとかは突っ込まないで下さい。 元が提出用なのでそれほど長くしたらいけませんし、管理人は怠慢で(滅加筆中にジョエル氏に「修正するところが少ない」とか言ってたのは秘密です(死