Alive特別読み切り小説「交錯する思い」
Aliveで特別読み切りとして掲載したSS。
戦争、そして傭兵。激動の時代に生きる、様々な者達の思いが交錯する。
Last Update:2004.12.18
森林の静寂を破る、青年が一人。
長いこと人が通っていないのだろうか、うっそうと生い茂る森の中を青年がひたすら走っている。
彼は手に持ったナイフで邪魔な蔦などを切って進んでいるが、しきりに後ろを気にしている。
少し開けた、広場に出た。
後方から人が追ってこないのを確認し、青年は休もうとして近くの木にもたれかかった。
「あいつら、大丈夫だろうか・・・」
乱れた息を整えながら、先程分かれた友人達の無事を思う。
しかし、心配ばかりしてもいられない。少しでも敵から離れなければいけない。
「・・・そろそろ、行くか。」
青年が立ち上がり、進もうとしたところ―――
「そこまでだ!」
周囲に女性の声が響く。
そして、一斉に周囲から騎士の姿をした男達が姿を現す。その数、30と言ったところか。
そして、森の奥から、先程の声の主―――何故か顔に所々つぎはぎのある女性―――がゆっくりと姿を現す。
「まんまと罠にはめられた、ってわけか・・・」
「その通りだ。状況はこちらが圧倒的に有利。諦めて投降するんだな。」
「生憎。諦めるって言葉は嫌いなんでね。」
青年は、腰につけていた短剣を抜き、構える。
「死を選ぶか・・・ かかれっ!」
女性のから出る、突撃の指令。
騎士達が一斉に動きだし、青年を襲う。
青年は物動じせずに先ず襲いかかってきた二人を斬り、そして騎士の剣を次々と避け、返しながら斬りつけていく。
しかし、所詮は短剣である。斬られても動きが損なわれるほどのダメージにはならない。
だが、それを何度も続けるうちに、徐々に騎士の動きが徐々に鈍くなっていく。
「・・・ったく、幾多の戦場をくぐり抜けてきた傭兵を舐めて貰っちゃ困るな。」
「何をした、貴様!」
「敵の行動力を削ぐための神経性の毒の一種だ。こいつがこの短剣に仕込んである。」
言いながら、男が手袋をつけた左手を引っ張る。刹那―――
周囲に響きわたる、断末魔の金切り声。
周囲にいた物の殆どが、青年の居る方向を反射的に見る。
そこには、無傷の青年と身体を「崩された」男達だった物が転がっていた。
「それと、罠師であることも忘れて貰っちゃ困る。」
男の左手には、無数の「ワイヤー」が握られていた。
だが、青年の後ろを動く、人影が2つ・・・
「覚悟っ!」
青年の背後から、騎士が2人。
青年も完全に反応が遅れ、振り向いたときには距離はほんの数歩。
何とか致命傷を避けるために身体を捻る。ちょうどその時だった。
バァン!
謎の、銃声。
青年の背後を突いた2人の騎士は背中を打ち抜かれ、その場に崩れ落ちる。
「全く、中衛支援型が一人で無茶をするな。」
近くの茂みから、銃を持った男が姿を現す。
そして―――
「閃魔呪殺陣!」
強烈な冷気、そして呪詛を纏った衝撃波は、騎士を数人巻き込み、吹き飛ばす。
技の主は、魔力を宿した刀を持つ少女。
「依頼主が私より先に死んで貰っちゃ困るじゃないのよ。」
さらに―――
「ぐわぁっ!」
茂みから音もなく飛ぶ、矢が数本。
それらは確実に騎士達を射抜き、仕留めていく。
「私達がいること、忘れないでよねっ。」
「おまえがくたばったら、パートナーはどうすりゃいいんだよ?」
そして、茂みから出てくるのは大弓を構えた女性といつもその傍らにいる精霊。
「な、お前達、何故!?」
その様子を見て、最も狼狽したのは攻め方の女性である。
「沈めたさ、全員。」
「あの程度で、私達を仕留めようってのが間違いなのよ。」
青年の周りに、駆けつけた3人が移動する。
つぎはぎの女性は劣勢を察した。既に初めいた騎士の2/3はやられている。
「ちぃっ、今は退いてやる!」
そういって、呪文を唱えると、彼女はその場から消えた。
同時刻、とある城の一室。
窓際に、甲冑に身を包む壮年の将が佇んでいる。
「失礼します。」
ドアを開け、斬馬刀を持った女性が部屋の中に入ってくる。
「戻ったか。」
「はい、途中で賊に襲われて時間がかかりましたが・・・」
「それで、例の件はどうなった?」
「そのことですが、ある重大な事実が判明いたしました。」
「そうか・・・ わかった、座って話を聞こう。」
そういうと、男は女性に椅子に座るように促し、自分もそれに向かい合う形で椅子に腰掛ける。
女性の話を聞き終わった男は、何事か考え事をしているようだった。
暫くして、不意に口を開く。
「こいつの存在が、やはり大きいようだな。」
そういって、男は懐から黄色い石を取り出す。
「そのようです。」
「奴らがこれに気づく前に、戦争を終わらさねばな・・・」
そういって、男は窓の外を見る。
「そういえば・・・」
思い出したように、女性が喋り始める。
「帰還中賊に襲われたとき、ある一行に助けられまして。」
「それがどうしたと?」
「その一行の中に、あの男が居ました。」
「・・・なるほど。」
男は、ゆっくりと口を開いた。
森の中の戦いから数時間後、とある廃城。
ここでもまた、青年のように見える者が窓の外を見ている。
すると、魔法陣と共に女性が二人、その場に姿を現す。
「報告します、教会が『奴』を逃がしました。」
「たった4名を相手に2部隊が壊滅し、総計100に近い戦死者を出したようです。」
報告を聞いて、青年は嘲笑を浮かべる。
「捕まえてみせると公言してその結果とは。大失態もいいところだな。
天下に名高い神殿騎士団の名声も地に落ちた、と言うところか。」
女性は二人とも無言で頷く。
そして、間をおいて再度口を開く。
「そして、『奴』はこの廃城に向かっているようです。
目的が全く分かりませんし、偽報かもしれませんが・・・」
女性の報告に、青年は再度窓の外を見る。
「そう、か。」
青年は何事か考えているようだったが、直ぐに向き直り、2人の女性に言う。
「『奴』は必ずここに来るだろう。戦闘準備をしておけ。」
「了解しました。」
そう言うと、2人は魔法陣と共に部屋から消える。
青年は再び、窓を見た。
漆黒の闇夜の中に、月が燦然と輝いていた。
「全く、一介の傭兵である俺がなんでこんな厄介事に巻き込まれていくのだか。」
確率崩壊という名の最凶のスキルを持つ青年は、ただただ嘆く。
自らの不運、そして境遇。そしてなによりゆっくり出来ない今の生活を。
「なんだか、凄いことになってきてるよねぇ・・・」
「ある意味あそこまで行くと凄いよな、あのスキルも。」
大弓を持った女性と精霊は、パートナーを優しく見守る。
彼を支え、そして彼と共に生きていくことを。そして何より彼のことが好きだから。
「おまえがなんて言おうと、俺は絶対ついていく。」
銃を持つ稀代の機工師は、自らの意志で青年についていく。
父を、そして自分を助けてもらった者を、見殺しにするのだけは許せないから。
「世界がどうなろうと関係ない。私は、私の成すべき事を成し遂げるだけよ。」
若年の傭兵少女は、どんな危機が訪れようとも青年を離れない。
傭兵として、そして雇われ者として依頼者である青年を守る。ただそのためだけに。
「戦争?関係ねぇな。なんて言われようと俺は俺の意志でだけ動く。」
かつての戦争で英雄と称された壮年の将。
彼は、他の指導者の意に反し和平のために独自で動く。
「団長を助けること。それが私の生き甲斐。」
別の道を歩む壮年の将の意志を理解し、補佐し、そして支える女性。
それは、彼女が望んだことだから。
「我々の最終目的の達成のためなら、犠牲は問わねぇよ。」
闇の力を行使する青年は、物事を達成させるには手段を問わない。
自分たちの最終目的を達成するためならば。
「人間は儚くて、そして脆い。」
闇に身を置く女性は今日も短剣を振るう。
主君の野望を補佐し、そして成熟させる為だけに。
「私が今の私であるように、そのためなら・・・」
自分の存在意義を掴み続けるために、女性は今日も戦い続ける。
存在意義をくれた主君をたすけ、その野望を完遂させるために。
「奴らを追え!逃がしては教会の末代までの恥だ!」
つぎはぎの女性は、今日も謀略を張り巡らせる。青年を捕らえるという為に。
それを、裏から利用されているとは全く気づかずに。
大戦を迎えた大地の上で、それぞれの人物の思いが交錯する。
その大戦の裏に隠された一部の人間の野望を察する者は少ない・・・
そんな彼らの行く末を祝福するかのように、月は今宵も輝き続ける―――
あとがき
Aliveの読み切り用に書いたSSです。モデルはFinal Fantagy Tactics。
といってもAliveの内輪さんの登録キャラクターをモデルにしてますからキャラ自体は結構変わってます。
元の性格云々を出すと結構路線変わっちゃうので苦労したりしなかったり。
時効なので晒すけどキャラキャストはこんな感じ
ラムザ:リーク
ムスタディオ:狼魔
アグリアス:零華
メリアドール:リディア
雷神シド:ダグラス
オーラン:シア
エルムドア:キリオン
レディ・セリア:ナナコ・ハル
ザルモゥ:ツギハギ
似てない人多いけどね(汗
技術的なことは何も言わないけどとりあえずFFTは一度やってみるべし。
面白いです、いやホントに。白魔導士TUEEEEで。