クリスマス特別SS「聖夜の光の下に」
2004年クリスマス特別読み切りのTOE2次創作。
グランドフォールから数ヶ月後。クリスマスの到来にリッド達は・・・
Last Update:2004.12.25
「ファラ、ミンツが様子、いつもと違うよ!」

ミンツに入ったメルディは、町の様子が前に来たときと違っていることに気づいた。
リッド達も、入ってから確かに町の様子が違うことに気づいた。
様々なところで電飾が光り、広場には大きなツリーが置かれている。

「あ、そっか。すっかり忘れてたけどもうすぐクリスマスだね。」

ファラもはっとしたように思い出す。
なるほどよく見れば飾られているものや大きなツリーはクリスマスに使うものばかりだった。

「な〜、ファラ〜、クリスマスって何だな?」
「えーっと、誰かの誕生日の日だったんだけど・・・ 誰だっけ?」
「セイファートの生まれた日がそのまんまクリスマスの日になっている、だろ。」

答えは思わぬ所から返ってきた。
一同、びっくりしてリッドを見る。その視線に思わずリッドはたじろいた。

「な、なんだよ。間違えたことでも言ったか?俺。」
「いや、まさかリッドから答えが返ってくるなんて思わなくて。」
「全くだ。」
「全くだな!」
「な、何だよその言いぐさは!」

ファラ達から帰ってきた言葉に、リッドが激怒したのは言うまでもない。
が、ファラ達はそんなリッドの様子は歯牙にもかけない。

「クリスマスと言えば、料理だよね。キールの用事が終わったらラシュアンに戻ろうか?
ラシュアンだと色々準備できるでしょ?」

ファラの提案に、キールは「いや」と首を振った。

「確かにラシュアンに行くと色々準備は出来るが・・・
悪いが僕の用事はどれくらいかかるか皆目見当がつかない。学部長にあって色々言いたいこともあるしな。
それと、今からラシュアンに向かっても5日はかかるぞ。クリスマスまでは後3日。どう急いでも間に合わないのは目に見えてる。」
「じゃあ、バンエルティア号で行けば良いんじゃない?」
「すみませんが、ラシュアンの近くにはバンエルティア号が停泊できそうな沖って無いんですよ。」

キールの説得、そしてチャットの言葉にファラは首を捻る。

「料理を作るならここでやるしかねえだろ?どう考えたって。」
「だな。具体的にはバンエルティア号になるが・・・」
「あそこは既に生活空間化してるから良いんじゃないか?なぁ、チャット。」
「えぇ、かまいませんよ。」

チャットの返答に、ファラが「よしっ」と意気込む。

「じゃあ、バンエルティア号で決まりね。」

一同、頷く。
これで今年のクリスマスはバンエルティア号で過ごすことが決まった。



リッド達がネレイドを打ち倒してから数ヶ月。
グランドフォールの被害はインフェリア、セレスティアともに甚だしかったが、どちらも互いの共同作業で素早い復興を見せつつある。
また、リッド達自身も慌ただしく両惑星間を行き来し、復興の手助けをしていた。
その折り、キールがミンツ行きを提案し、リッド達は一路ミンツへと向かったのである。

ミンツの街もまだ完全に立ち直ったわけではなく、半壊になっている家や、道路の隅に置かれた瓦礫などがその被害の深刻さを語っている。
それでも街の主要機能は回復していて、町中はいつもと変わらず人が行き交っている。
ミンツ大学へ行くと言うキールと別れたリッド達は、町の様子を見て回っていた。

「なぁ、ファラ。クリスマスってどういうことをする日か?」

町中を回り終わり、バンエルティア号に向かう道すがら、メルディが訪ねる。

「うーん、パーティーをしたり、プレゼントをもらったりする家もあるみたいだけど・・・
私達は大抵料理だけですましてたよね。」
「まぁな、いちいちパーティーするのもめんどくせぇし。」
「セレスティアにはそういう日はないの?メルディ。」
「はいな。セレスティアがクリスマスは無いのが残念な。」
「ふーん・・・」

ファラは頷く。傍らにいるリッドも納得したような表情をしている。

「よーし、じゃあメルディのために頑張って料理作るからね!」
「ワイール!ファラが料理、楽しみ〜」
「任せときなさい!」

ファラとメルディがわいわいはしゃいでるのを見て、リッドは微笑した。
(ファラもメルディも、ホントに楽しそうだよな・・・)
そう思いながら、幼い日のファラがクリスマス好きだったことをリッドは思い出していた。



2日間、リッド達は思い思いに過ごしていた。
リッドは必要があるとき意外は殆ど甲板で空を見ながら過ごしていたし、ファラとメルディは毎日のようにミンツに繰り出しては街の復興の手助けをしていた。
キールはよっぽど忙しいのか結局帰ってこなかったし、チャットはバンエルティア号の整備に余念がない。
いつもと変わらない日々を過ごしているうちに、クリスマスの日が来た。

ファラとメルディは昼食が終わると休憩もそこそこにキッチンに立ち、わいわい喋りながら料理をしている。
リッドもやることが無く、ボーっと甲板に寝っ転がって空を眺めていた。
そのリッドの視界が、一気に暗くなる。
よく見ると、それはキールの顔だった。

「キール、えらい忙しかったみてぇだな。」

そのままの態勢で、リッドはキールに問いかける。

「あぁ、カーライル学部長と徹夜で2日缶詰だ。
グランドフォールのもたらした結果から僕達の動きの一部始終、果てはあの黒体の構成から何から何まで聞かれたよ。」

キールは顔を起こし、甲板の手すりの方に歩いていきながら、言う。

「なんか、色々大変だったんだな、お前。」
「あぁ、おかげで父さん母さんの無事も確認できてない。」
「・・・いや、今行って来いよ。」

リッドも話しながら体を起こし、立ち上がって甲板にもたれかかっている。
キールはリッドの方をむき直して、「いや」と言う。

「取り敢えず仮眠が取りたい。眠いんだ。
それより先に、お前に手伝って欲しいことがあるんだが。」
「俺にか?」

キールの言葉に、リッドは驚いた。



そして、夜。
ファラとメルディが作った料理がテーブルの上に並べられている。

「うおっ、うまそう!」

部屋に入ってきたリッドは開口一番こう言って、周りを失笑させた。

「でも、匂いもいいし、美味しそうですよね。」
「でしょ、私とメルディの大作だよ!」
「はいな!メルディとファラが一緒に作ったよ!」
「こう言うときに大作を使うのはどうかと思うが・・・
それはさておき、リッドじゃないがホントに美味しそうな料理だな。」

そういいながら、キールは席に着く。
それを見て、ファラ達女性陣も席に着いた。

「よーし、じゃあ乾杯!」

ファラの声が高らかに響いた。



食事もあらかた終わり、みんな思い思いに喋り合っている。
リッドも残っている食べ物を喋りながら食べているていう、涙ぐましいほどの食いしんぼうっぷりを見せている。
そのリッドも食事を終え、ある程度談笑したところで、チャットが席を立った。

「じゃあ、ボクはそろそろバンエルティア号の整備に戻りますね。」

そういって、部屋を出ていく。それを見たリッドも、ファラに声をかける。

「ファラ、俺達も外に行こうぜ。」

ファラは、初めはリッドの意図を計り損ねた。
しかし、少し考えてから、思い出したように頷いた。

「うん!いこう!
じゃ、ちょっと外行ってくるね!」

そういって、リッドとファラも出ていった。
部屋に残ったのは、キールとメルディである。
キールは、リッド達が出ていって暫くはメルディと会話を続けていたが、不意にその会話を切る。

「メルディ。」
「ん?何か?」

キールは、ローブのポケットから一つの箱を取り出し、メルディに渡す。

「その・・・、プレゼントだ。」

メルディがその箱を開けると、中からアメジストの宝石がはめ込まれたネックレスが出てきた。
紫色のアメジストは、メルディの髪や目の色と似た輝きを発していた。

「綺麗だな〜」

美しく装飾されたネックレスを見た後、それを首からかける。
キールに向かって立ち直った後、その場で回って見せた。

「キール、似合うか?」
「あぁ、似合う。」

キールは照れながら、言った。



外に出たリッドとファラは、暗がりの草原で横になっていた。

「懐かしいよな、こうやって夜空を見るのは。」
「そうだよね〜」

クリスマスになるとリッドとファラは外に出て夜空を眺めるのが週間になっていた。
それをリッドは先日、思い出したのである。
だから先程、ファラを誘って(キールの為に席を空けたというのも半分あるが)外に出たのである。

「グランドフォールの後から、空の様子ががらっと変わったよね。」
「あぁ、夜になるとそこらで星が輝いてるのが見えるようになったよな。」
「うん。こんな神秘的な空が、セレスティアの裏に隠れてたんだよね。
それだけでも、私はネレイドを倒して良かったと思う。」
「あぁ。 奴を倒してなかったら見れなかったかもしれない光景だからな。」

セレスティアが見えていた頃には決して見ることの出来なかった光景。
2人は、しばらく無言で空を見つめていた。

「あ、あれセレスティアじゃない?」

ファラが指さす。
指さした先には、大きく、そしてひときわ明るく輝くセレスティアがあった。

「ほのかに外が明るいのは、セレスティアの光のおかげかな。」
「・・・そうかもな。」

リッドは静かに答えた。
頭上では、セレスティアの発する光が彼らを照らしているようだった。



―――どうか、聖夜の彼らに月の恩寵がありますように―――


あとがき
クリスマス用に書き上げたSS。展開の無理っぽさはお察し下さい−−;

さて、TOEの2次創作という形で書いたんですが、実はTW案も考えてました。
頭の中にあったのはこれとTWボリス視点のストーリーだったんですが、TWボリス視点はオチが浮かびませんでしたorz
というわけでこっちと言うことになりました。

全体的に「月の光」と言う表現が好きな私ですが今回もそれを使っています。
月ってどこか神秘的なところがあるじゃないですか。だからクリスマスのSSには合うと思うんですよ。
今回は大陸設定上月があるか不明なのでセレスティアを用いましたが、それでも結構無茶です−−;
タイムリーな話題なんですが、実は昨日(12/24)は満月だったんですよ。こんな夜を過ごせたカップルはあるのでしょうか。

・・・自分で言ってて嫌悪感orz

さて、いくつかお断りを。
まず、セイファートの生まれた日=クリスマスと勝手に設定作っちゃってます。
こっちではキリスト=クリスマスだからと思ったんですが・・・ 強引ですかそうですかorz
そして、セレスティアが自主的に光を発するかも分からないのに勝手に光ることにしてます。
この辺は私天文学取ってないのでお察し下さい−−;
あと、キールの手伝い申請は意図的に省きました。
その後のストーリー展開から推測できるからわざわざ入れる必要もないかな、と。
入れたら変になりそうでしたし−−;

1日遅いですが、これが電子文庫館からのクリスマス・プレゼントです。
楽しめて頂けたでしょうか?


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